■ はじめに:なぜ今長期優良住宅が注目されているのか
「長期優良住宅」という言葉を最近よく耳にしませんか?これは単なる“良い家”ではなく、国が定めた基準に合格した「認定住宅」のこと。持続可能な社会を見据えた住宅選びの中でも、近年とくに注目を集めています。人口減少や老朽化問題が進む日本では、質の高い住宅ストックの形成が大きな課題。そんな中、長く快適に住み続けられる「長期優良住宅」には、大きなメリットが詰まっているんです。今回は、その魅力や申請の流れ、そして押さえておきたい税制優遇まで、宅建士の視点で解説します。
■ 長期優良住宅とは
長期優良住宅※1とは、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて認定された住宅のことです。数世代にわたって長期間良好な状態で使用できるよう、構造や設備について特に優れた性能を持つ住宅を指します。
※1 長期優良住宅:長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅として、国が認定した住宅
■ 制度の目的と背景
この制度は2009年6月4日にスタートしました。制度創設の背景には以下のような課題があります。
社会的な課題
- 住宅寿命の短さ:日本の住宅の平均寿命は約30年と、欧米と比べて短い
- 資源の浪費:建て替えサイクルが短いことによる資源とエネルギーの浪費
- 住宅ローン負担:建て替えにより住宅ローンの二重負担が発生
制度の狙い
- 良質な住宅ストックの形成
- 住宅の資産価値の向上
- 環境負荷の軽減
- 住宅コストの長期的な削減
■ 認定基準の詳細
長期優良住宅の認定を受けるためには、以下の9項目の基準をすべて満たす必要があります。
- 劣化対策
- 木材の腐食対策、点検口や床下空間の確保など
- 劣化対策等級3(構造躯体が75年以上使える性能)
- 耐震性
- 耐震等級2以上、または等級1での追加性能確保
- 日本は地震大国。大地震への備えは必須です。
- 省エネルギー性
- ZEH基準相当の断熱性能と一次エネルギー消費量削減
- 維持管理・更新の容易性
- 設備配管の点検・交換がしやすい構造に
- 住戸面積
- 一戸建て:75㎡以上(地方は55㎡可)
- 1フロア40㎡以上などの基準あり
- 維持保全計画
- 30年以上の点検・修繕計画の策定
- バリアフリー性(2025年改正で一部義務化)
- 出入口の段差解消など、高齢化に備える設計
- 居住環境
- 立地や周辺環境との調和もチェック
- 災害への配慮(2025年から追加)
- 浸水対策や避難経路の確保など
■ 税制優遇措置の具体的な内容
長期優良住宅の認定を受けることで、様々な税制優遇を受けることができます。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)
長期優良住宅の優遇内容
- 控除対象借入限度額:最大5,000万円(一般住宅は3,000万円)
- 控除率:0.7%
- 控除期間:13年間
- 最大控除額:455万円(子育て世帯※5・若者夫婦世帯※6)、409.5万円(その他世帯)
※5 子育て世帯:19歳未満の子を有する世帯
※6 若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが40歳未満の世帯
適用期間:2025年12月31日までに入居した場合
所得税(投資型減税)
住宅ローンを利用しない場合でも受けられる減税制度です。
優遇内容
- 控除対象限度額:650万円(一般住宅は500万円)
- 控除率:10%
- 最大控除額:65万円
※住宅ローン控除との併用はできません。
登録免許税
不動産の登記にかかる税金が軽減されます。
軽減内容
- 保存登記:0.1%(一般住宅は0.15%)
- 移転登記:0.2%(一般住宅は0.3%)
固定資産税
新築住宅の固定資産税が軽減される期間が延長されます。
軽減内容
- 軽減期間:5年間(一般住宅は3年間、マンションは7年間)
- 軽減割合:税額の1/2
■ 申請手続きの流れとスケジュール
長期優良住宅の認定申請は、着工前に行う必要があります。
申請の基本的な流れ
1. 事前相談・計画検討
- 設計者・施工者との相談
- 認定基準への適合性確認
- 維持保全計画の策定
2. 技術的審査(任意)
- 登録住宅性能評価機関への申請
- 長期使用構造等確認書の取得
3. 所管行政庁への認定申請
- 必要書類の準備・提出
- 申請手数料の支払い
4. 認定通知書の受領
- 審査期間:約1~2ヶ月
5. 着工・建築
- 認定を受けた計画通りに建築
6. 完了検査・維持保全
- 建築確認の完了検査
- 維持保全計画に基づく定期点検開始
申請費用
所管行政庁での審査手数料
- 一戸建て住宅:約5~10万円
- 共同住宅:戸数により変動
登録住宅性能評価機関での技術的審査費用
- 一戸建て住宅:約15~30万円
審査期間
技術的審査:約2~3週間 行政での認定審査:約1~2ヶ月
建築工期を考慮して、余裕を持ったスケジュールで申請することが重要です。
■ デメリットや注意点
長期優良住宅にはメリットが多い一方で、以下のような注意点もあります。
建築コストの増加
認定基準を満たすため、一般住宅と比較して建築コストが増加します。
増加要因
高性能な断熱材・設備の採用
耐震性能向上のための構造強化
申請費用・手続き費用
増加額の目安:100~200万円程度
維持保全の義務
認定後は定期的な点検・記録作成の義務があります。
義務内容
点検頻度:10年以内ごと
対象期間:30年以上
記録保存:点検結果の記録・保存
費用負担:点検費用は所有者負担(1回あたり5~10万円程度)
計画変更時の手続き
認定後に設計変更を行う場合、変更認定申請が必要な場合があります。
■ まとめ:長期優良住宅は未来への投資
長期優良住宅は、初期費用は増加するものの、長期的には多くのメリットをもたらす制度です。
重要なポイント
経済面のメリット
- 最大455万円の住宅ローン控除
- 各種税制優遇による負担軽減
- 住宅ローン金利の優遇
住環境面のメリット
- 高い耐震性・省エネ性による安心・快適な暮らし
- 長期間にわたる住宅の資産価値維持
- 優れた維持管理性
社会的意義
- 良質な住宅ストック形成への貢献
- 環境負荷軽減
- 持続可能な社会の実現
建築業界の宅地建物取引士として、これから家づくりを始める方には「初期投資を長期的な視点で考える」ことをお勧めします。長期優良住宅の認定を受けることで、質の高い住まいと経済的メリットの両方を手に入れることができます。
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長期優良住宅は、家族の未来と日本の住宅文化向上への投資でもあります。ぜひ積極的にご検討ください。
※最新情報は公式ページをご確認ください。
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